性行為を介して感染する病気です。クラミジア感染症、淋病、トリコモナス膣炎、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、梅毒などがあり、とくに若い女性のクラミジア感染症の感染率が高い傾向にあります。おりものがおかしくなったり外陰部にかゆみが出たりといったはっきりした症状が出る場合もありますが、ハッキリと症状が出ず、検査をしてみないとわからない病気もあります。また中には放っておくと不妊症の原因となってしまうような病気もあります。おかしいと思ったらすぐに婦人科を受診して下さい。
性感染症で大切なことは、感染した場合には、女性だけが治療しただけでは不十分ということです。 せっかく自分は治療がすんだのに、パートナーが感染していたら再感染することになります。二人とも検査(再検査)をして異常がないことがはっきりするまでは、性行為を避けるか、コンドームを必ず使用するようにして下さい。 また、症状が軽くなったり無くなったからといって、治療を途中で止めたり、受診を止めることはしないようにして下さい。症状がないからといって完全に病原菌が無くなったわけではありません。
近ごろはオーラルセックスによるのどへの淋菌やクラミジアの感染の蔓延が問題になっています。のどに感染してもほとんど症状が出ることもなく、病気の蔓延化の原因となっています。オーラルセックスを含めてどんな場合にもコンドームをつけないでセックスをすると性感染症になってしまう可能性があることを忘れないで下さい。
クラミジアは現在、最も発生頻度が高い性感染症で、とりわけ20歳代女性に多い病気です。多くは自覚症状が有りません。女性の生殖器に感染すると「子宮頚管炎」を、男性の尿道に感染すると「尿道炎」を引き起こします。
潜伏期間は1〜3週間です。70%以上の人は無症状で、感染したことに気付かずに放置されがちです。子宮の入り口で子宮頚管炎を起こし、おりものが増えてきます。さらに感染が卵管や卵巣、腹膜などに及ぶと下腹部痛(便秘による痛みと区別がつきにくいようなお腹の下のあたりの痛み)や性行為をした時の痛みがみられます。
この時点で気付かずに更に炎症が進むと、卵管が狭くなったり、骨盤の中に癒着がおきたりして、不妊症や子宮外妊娠の原因となることがあります。
また、妊娠中にクラミジアに感染していると、流産や早産の原因になったり、お産の時に産道で感染して、生まれてくる子供がクラミジアによる結膜炎、肺炎になることもあります。
潜伏期間は1〜3週間です。外尿道口からの分泌物、かゆみ、軽い排尿痛などを伴う尿道炎や、陰嚢のはれ、痛み、発熱を伴う精巣上体炎などがみられます。尿道炎は一般に軽症で、約5%に精巣上体炎を併発します。
分泌物や尿で検査をします。
早期発見すれば抗生物質を飲んで治療します。しかし、自分だけを治療しても、パートナーから再び感染してしまう可能性がありますので、パートナーの治療も必要です。きちんと治ったかどうか再検査することも大切です。
淋菌という細菌によって起こる感染症。クラミジア感染症と同様、女性の場合とても症状が分かりにくいことが問題です。
子宮の入り口(子宮頚管部)で炎症を起こすと、黄色い膿のようなおりものがでることもありますが、男性と比べて無症状のことも少なくなく、感染に気付かず放置されがちです(これが蔓延の原因になっています)。感染が拡大して骨盤の中で炎症が広がると、半数以上に発熱、下腹痛がみられます。これに気付かず放置しておくと不妊症の原因となります。 妊娠中に感染していると、出産のときに産道で感染し、新生児が結膜炎を起こすことがあります。
また、男性の淋菌性尿道炎がオーラルセックス(フェラチオなど)によって女性ののどに感染し、淋菌感染症の感染源になっているケースが増加しています。咽頭感染の場合は、のどの痛みなどの炎症症状がない場合があり、放置されることが多く、蔓延化の原因になっています。
潜伏期間は3〜10日です。尿道炎では、排尿痛と膿の排出がみられます。放置すると精巣上体に炎症を起こし、陰嚢のはれや痛みを生じることがあります。
男性の診断は特徴的な膿排出を伴う尿道炎から比較的容易ですが、女性の場合には症状がわかりにくく、おりもので検査をします。
抗生物質で治療しますが、薬剤に耐性を持つ(薬が効きにくい)淋菌も増えています。従って淋菌が陰性になった(いなくなった)ことを確認する必要がありますが、治療直後の検査では一時的に菌量が減って見せかけの陰性になることもありますので、治療後10日以上の休薬期間をおいたのちに再検査をする必要があります。
トリコモナス原虫の感染によって起こる膣炎です。最近では減少傾向にあります。ほとんどは性行為で感染しますが、浴場、便器、タオル、手指などから感染する可能性もあります。年齢的には30〜40才代が多く、他の性感染症より年齢層が高いことが特徴です。
潜伏期間は4〜20日です。外陰部のかゆみ、灼熱感と悪臭を伴う黄色膿性のおりものが特徴です。
男性では尿道炎がみられることもありますが、無症状のケースもあります。
抗原虫薬(メトロニダゾール)で治療します。
性行為の時にヒトパピローマウイルスに感染して外陰部や肛門にかけて小さなイボがたくさんできてくる病気です。ウイルスによる病気のため、からだの抵抗力が落ちている時などに発症しやすいと言われています。 尖圭コンジローマに感染する人は、同時にハイリスクタイプのヒトパピローマウイルスに感染する可能性も高いため、子宮頚がんのリスクが高くなるともいわれています。
潜伏期間は数週間から数カ月です。イボが増えてくるとかたまりになり、かゆみや灼熱感、異物感を伴い、大きくなるとカリフラワーのようになってきます。
コンジローマに効きめのある外用薬(ぬり薬)を使用します。 ただし、大きいイボは治りが悪く、ほかの場所に広がってしまうこともあるため、電気メスやレーザーで焼き切ったり、液体窒素で凍結させるという方法をとることもあります。
単純ヘルペスウイルスというウイルスに感染して、女性の場合には外陰部や膣を中心に潰瘍や水泡を形成する病気です。 初めて感染した場合には症状が急激に悪化し、激しい痛みのために排尿しにくくなったり、熱が出たりすることもあります。妊娠中に発症した場合には、出産のときに赤ちゃんが感染することがあり注意が必要です。
単純ヘルペスは抗原性の違いで1型と2型に分類されます。1型は主として目や口、脳などの上半身に、時に性器に感染しますが、2型は性器などの下半身にしか感染しないといわれています。つまり、性器は1型、2型とも感染しうるのです。(口唇ヘルペスがある場合には、オーラルセックスによって性器に感染することがあります) ヘルペスに一度感染すると、神経細胞にウイルスが潜伏し、ストレスや過労、妊娠などからだの抵抗力が落ちた時に再発することがあります。潜伏しているウイルスを完全に体から排出することは不可能ですが、外陰部の潰瘍などの症状を適切な薬で治療することは可能です。
性行為による感染の機会から、2〜10日間の潜伏期間をおいて発症することが多いとされています。 初感染の場合には5mm程度の激しい痛みを伴う潰瘍を形成し、時には痛みのために歩くことや排尿が困難になることもあります。左右の太ももの付け根のリンパ節が腫れ、熱が出ることもあります。 過労、月経などに伴って再発することもあり、数個の潰瘍性病変がみられますが、症状は初めて感染した時よりも軽く、自然治癒することもあります。
抗ウイルス剤の点滴、内服薬、外用薬を症状によって使い分けていきます。
単純ヘルペスの感染力は強いため、患部に触れた場合には手指をよく洗うなどの注意が必要です。